建築環境のマイクロバイオームの観点から食品の品質と安全性を評価したレビュー論文を発表

 

ポイント
  • 建築環境におけるマイクロバイオームは、食品加工施設において深く関わっています。
  • 施設内における有益な微生物と有害な微生物のバランスが製品の品質と公衆衛生に直接影響します。
  • 施設における汚染を防ぐための過剰な洗浄や消毒は薬剤耐性菌を増加させる可能性があり、適切な微生物管理が重要となります。
  • 施設内の微生物をマッピングすることで、微生物に対する最適な介入を行うことができます。

概要

住宅、職場、商業施設や公共機関などの建築環境には、多くの微生物が生息しています。これらの微生物は、人間、動物、植物や土壌などのいくつかの発生源から建築環境に移動し、空気中や建築環境内の表面に定着します。これらを総称して「建築環境におけるマイクロバイオーム (The Microbiome of the Built Environment; MoBE)」と呼んでいます。

 

 

MoBEは食品加工施設では有益であると同時に有害でもあります。発酵食品の場合、微生物は製造過程に寄与する一方で、食肉加工施設の場合、微生物は汚染源となるため、徹底した衛生管理が求められます。本レビューでは、食品の安全性や施設管理を改善するためのアプローチなどを述べながら、MoBEについての洞察を深めることを目的としています。

 

MoBEを用いた発酵

MoBEは発酵食品の中心的な役割を果たしており、特に日本酒やワインにおいてアルコール発酵のための蔵付き菌として認知されております。本レビューでは、日本酒やビール、ワインの発酵に関与しているMoBEについて述べています。そして、施設固有のMoBEが製品の特性や風味、品質に与える潜在的な影響について示唆しており、施設内の微生物評価の重要性を主張しています。

 

MoBE制御と管理の重要性

食品加工施設におけるMoBEの制御と管理は、病原体由来の感染症を防ぐために重要です。本レビューでは、食肉加工施設における微生物による汚染について、温度や汚染源などに触れながら述べています。また、消毒剤による薬剤耐性菌発生のリスクについても言及しており、適切な洗浄法の重要性についても主張しています。

 

食品加工施設への介入

本レビューを通し、建築環境における微生物の観点から食品加工施設に効果的な介入を提案しました。有益な微生物を定着させるためのアプローチなどを述べています。また、有害な微生物の増殖を防ぐために施設内の微生物マッピングの重要性も述べています。

 

今後の展望

本レビューより、食品加工施設における微生物の多様な側面について述べてきました。今後、BIOTAとしてマイクロバイオーム解析を通して、施設内の微生物のマッピングを行い、さらには発生・拡散・受容を軸に施設内の微生物多様性を高めていくことで、食の分野においても一層の貢献を目指して努めてまいりたいと存じます。

 

発表雑誌

論文タイトル:Understanding the quality and safety of food production through the lens of The Microbiome of The Built Environment

掲雑誌名:Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry

著者:

Kota Imai, Ryo Niwa, Masaki Fujioka, Kohei Ito*

∗ Corresponding authors.

URL:https://doi.org/10.1093/bbb/zbad164

 

用語説明

※1 マイクロバイオーム:ある環境中に存在する微生物の総体のこと。

 


BIOTAの取り組み

BIOTAは、生活空間の微生物の多様性を高めることで健康で持続性のある暮らしの実現を目指しています。

都市環境のマイクロバイオーム解析を中心とした「微生物研究」事業、

得られた研究成果をもとに、微生物多様性を高めるランドスケープデザイン、建築設計、素材開発へと活かす「空間創造」事業に取り組んでいます。

また、微生物多様性への理解を深めるための「文化醸成」事業にも力を入れています。

 

お問い合わせ先:info@biota.ne.jp

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