ぬか床がヒトの微生物叢に影響を与える可能性:ぬか床を管理することによりヒトの手に乳酸菌が移行し、皮膚の微生物叢に影響を及ぼす可能性を発見

 

ポイント
  • ぬか床は乳酸菌を用いて野菜を発酵させます。
  • ぬか床の手入れには、ヒトの手でかき混ぜることが必要です。
  • マイクロバイオーム解析により、ぬか床の大部分を乳酸菌が占めていました。
  • ぬか床由来の乳酸菌は人間の皮膚に一時的に定着しますが、すぐに剥がれ落ちてしまいます。
  • ぬか床を手でかき混ぜることで皮膚の微生物叢に短期的な影響を与える可能性があります。
  • 微生物を介した食品とヒトの相互作用を示唆しています。

 

背景

ぬか漬けは、米ぬかを使った漬物であり、乳酸菌発酵させて作ったぬか床の中に野菜などを漬け込んで作ります。ぬか床を作るときや手入れするときにはヒトの手でかき混ぜる必要があります。そのため、ぬか床が皮膚の微生物叢に影響を与えていることが示唆されます。しかし、ぬか床や皮膚の微生物叢に着目した研究は報告されていません。そこで、本研究では、ぬか床の管理がかき混ぜる人の皮膚の微生物叢に与える影響について調査しました。

 

方法

3人の参加者に市販のぬか床を14日間かき混ぜてもらい、残りの14日間ではかき混ぜずに微生物の定着と脱落を調査しました。ぬか床では14日間、手のひらでは28日間の期間において定期的にサンプリングを行い、マイクロバイオーム解析を実施しました。

 

結果
ぬか床における微生物叢の組成

まず、マイクロバイオーム解析によりぬか床における微生物叢の組成について調査しました。14日間にわたるぬか床における微生物組成は、1日目と比較して大きな変化は確認されませんでした。ぬか床では、Loigolactibacillus属が最も多い相対存在量を占めていました。2番目には、Pantoea属が多く、Xanthomonas属とStaphylococcus属も確認されました。

 

 

ぬか床と皮膚で共有された微生物の特定

最後に、ぬか床と参加者の皮膚の間で微生物がどの程度移行しているかを調査するために、shared ASV解析を行いました。Shared ASV解析とは、異なるサンプル間で完全一致したアンプリコン配列を算出することでぬか床と皮膚の間で共有された微生物の特定が可能になります。その結果、主にLoigolactibacillus属がぬか床と皮膚で共有されていることが確認されました。しかし、ぬか床をかき混ぜるのをやめた15日目以降では、微生物の共有が確認されませんでした。

 

 

結論

本研究では、ぬか床からヒトの皮膚への乳酸菌の移行を明らかにしました。ぬか床の微生物は、皮膚に一時的に定着するが、すぐに剥がれ落ちてしまうことが確認されました。この研究は、微生物を介した食品とヒトの相互作用を示唆しています。

 

今後の展開

本研究は、ぬか床とヒトにおける微生物を介した相互作用の可能性を報告しました。しかし、実際に具体的な作用についてはまだ解明されておりません。そのため、今後の研究ではぬか床とヒトにおける微生物の移行がヒトの皮膚に対して与える影響について評価していく予定です。

 

発表雑誌

論文タイトル:Direct contact of fermented rice bran beds promotes food-to-hand transmission of lactic acid bacteria

掲雑誌名:FEMS Microbiology Letters

著者:

Ryo Niwa, Dominique Chen*, Young ah Seong, Kazuhiro Jo, Kohei Ito*

∗ Corresponding authors.

URL:https://doi.org/10.1093/femsle/fnad120

 

用語説明

※1 マイクロバイオーム:ある環境中に存在する微生物の総体のこと。

 


BIOTAの取り組み

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